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最高裁判所第二小法廷 昭和36年(オ)841号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士浅野幸一の上告理由第一点について。

本件選挙の候補者中に「ワカタ」なる屋号の者が二名あり、選挙管理委員長は、右両名に選挙運動に関連して注意をうながしたのに対し、ともに「カド」と呼称されている候補者大和田吾東治及び藤原武雄には右のような注意をうながさなかつた事実及び開票の結果「ワカタ」なる記載の投票は一票もなかつたのに対し「カド」と記載された投票が多数存在した事実は、原判決の確定したところである。論旨は、右は選挙管理委員会が候補者を差別的に取り扱つたものであり、本件選挙の自由公正は害された旨を主張するのである。

選挙の管理執行が選挙の規定に違反するとするについては、所論のように、必ずしも選挙執行機関の故意過失を要するものではないが、本件の場合、原判決の認定するところによれば、選挙管理委員会は、開票に至るまで、前記大和田、藤原の二名の候補者がともに「カド」と呼称されていることに気が付かなかつたというのであるから、注意をうながすことも出来なかつたわけであり、この一事をもつて、所論のように候補者を差別的に取り扱つたものということはできない。原判決は正当であつて、論旨は理由がない。

同第二点について。

論旨は要するに、通称を記載した投票については、公職選挙法六八条の二は準用すべきではないというに帰する。

しかし、同条が選挙人のした投票をなるべく有効にしようとする趣旨であり、また、通称を記載した投票も有効とする以上、通称について同条の適用を否定すべき理由はない。論旨は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

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